2016年12月8日木曜日
海洋ゴミの問題①
世界や日本における漂流・漂着している海洋ゴミの問題はすでに世界的課題となっている。
実際、世界のプラスチック生産量が急増する中、2010年時点で480万~1270万トンのプラスチックが海に流出しているというのだ。
2015年にドイツのエルマウで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議では、プラスチックゴミによる海洋汚染が世界的課題となっていると初めて首脳宣言に明記されている。
また、今年5月のG7伊勢志摩サミットでも海洋ゴミへの対処が再確認されてもいる。
特に、人口の多いアジアでは多くの海洋ゴミが発生しているのだ。
陸上から海洋に流出したプラスチックゴミの発生量は、中国を筆頭に、トップ10のうち6力国を東アジアと東南アジアの国が占めている。
どうしてこれらの国々なのか?
それは、消費が多く、廃棄やリサイクルのシステムもそれほど整っていない、ということが背景にある。
では、日本は、というと30位で国内から流出するゴミの量は比較的少ないが、東アジアの海流の下流に位置し、大量のゴミが漂着してきているという。その7割がプラスチックゴミなのだ。
プラスチックゴミは、壊れにくく水に浮くため、生活圏から川などを経由して海流に乗り、遠くの海岸などへ運ばれている。
プラスチックは紫外線や寒暖差などで、もろく細かくなり、波にさらわれて海を漂う。
こうしてできた5ミリメートル以下のプラスチックゴミは、「マイクロプラスチック」と呼ばれている。
下水処理をすり抜けて自然環境に流出していて、日本周辺海域におけるマイクロプラスチックの数は、平均的な世界の海の27倍に上るという報告もある。
では、マイクロプラスチックは生態系に影響を与えているのか?
マイクロプラスチックに関しては研究者の中でも、ここ5年で関心が急速に高まってきているという。
最近では、エピやカニ、市場で売られている魚といった海洋生物、海鳥などからマイクロプラスチックが発見されたという報告が増えているからだ。
世界中の海に漂うマイクロプラスチックが、生態系の中に入り込んでいるのは確かだといえる。
ただ、これが生態系への影響がある否かは、まさに研究の真っただ中である。
あまり影響がないという論文がある一方、例えば東京農工大の高田秀重教授のグループは、室内実験を通して、マイクロプラスチックに付着した有機汚染物質が生態系に蓄積される可能性を指摘した。
あるいは、マイクロプラスチックをプランクトンや稚魚などの魚介類が食べると、成長阻害や生殖障害が起こるという研究もある。
プラスチック自体は栄養でも毒でもなく、大型の生物が食べる分には問題ないが、小型の生物が食べると無駄なエネルギーを消費してしまうためだ。
海洋ゴミの問題は、どこか心の隅にでも置いておくことが必要なのだ。
関連参照:
健康ライフのヒント集
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