2016年7月11日月曜日

プログラミング教育のはじまり

文部科学省がこの4月、小学校でのプログラミング教育の必修化方針を発表した。

諸外国ではすでに、プログラミングを含む情報教育の低年齢化が顕著になっているという。

英国ではすでに小中学校でのプログラミング教育を2014年から必修とした。

米国では情報技術者の給与が高いという実利的な理由もあり、コンピューター科学の必修化が多くの州や市で進み、草の根的なプログラミング教育の運動も盛んである。


プログラミング教育の目的はどこのあるのだろうか。

専門の東京大教授の萩谷教授は

「あえて一つに絞るなら『情報学によって創造力を高める』ことだろう。」
といっている。

プログラマーと呼ばれる技術者の予備軍を増やすことだけでは決してない。プログラミング教育によって餐われる典型的なスキルとして、コンピュテーショナルシンキング(コンピュー科学的な思考)が上げられている。

身近な例でいえば、料理や掃除の手順を考えることも「並列処理」、「問題分割」、「最適化」といったコンピューター科学の考えを駆使しながらアルゴリズムを創造する過程に他ならないのである。
 
こうした思考が、新ビジネスを始めたり、社会制度を設計したりするために有効であることは明らかだ。

日本がこれからも豊かな社会であり続けるためには、市民一人ひとりが情報学の素養を背景に新しい価値を創造していく必要がある。

だが、情報学の入りロでしかない情報リテラシーにおいてさえ、日本の市民レベルは諸外国にくらべて大きく遅れている。

たとえば経済協力開発機構(OECD)の2012年の調査では、学校外でコンピューターを使って宿題を作成すると回答した者の比率は、OECD平均が79%なのに、日本は9%で最下位である。

その原因の一つは、情報学という学問の認知が十分でなく、これまで教育における重要性が認識されて来なかったことだと考えられる。

この課題を克服する試みの一つが、日本学術会議が策定し、3月に公開した情報学分野の参照基準である。
 
参照基準とは、政治学や医学など30に及ぶ専門分野ごとに「その分野についてどのような学び方をするか」「学ぶことによってどのような力がつくか」などをまとめたものでいわば、専門分野の「ものさし」となるものである。

この参照基準が情報学でも策定され、その学術的な基盤が明確に定義された意味は大きい。

これまで大学ごとに内容や質にばらつきのあった情報学の質保証に役立つだろうとされている。


学術会議が強調しているのが、情報学の参照基準が、その中核であるピューター科学も含めて「文系・理系を問わず、すべての分野に貢献する学問である」と捉えたことであr。

すべての市民が情報学の基本的な素養をもつべきことに対して学術的な根拠を与えたともいえる。

プログラミングは情報学のエッセンスが凝縮した活動といえる。

今後、文科省で内容が検討される小学校のプログラミング教育においても、単なる技能習得に終わることなくコンピューター科学的な思考を育て、情報学の基礎として導入されることが期待されているのである。


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