2017年5月28日日曜日

中国のだしの話

広大な中国では食文化が地域で分かれているので、いきなり括るのは難しいのですが、鶏や牛豚などの肉頬、中国ハム、骨、魚介、野菜、香味野菜など多彩な原料をもとに、作られてきました。

中国料理は世界中に浸透しており、国外では北京、広東、上海などの料理の系譜に必すしもとらわれず、現地の材料を自在に活用するという姿勢がみられます。

例えば、バンコクで一番美味しいと日本人に評刊のタイ料理は、実は中国人シェフの料理でした。

中華の多様な技術とだしでタイ料理を食べさせる力を感じます。

中国のだし「湯」と呼ばれ、フランスのポトフのように、動植物の煮物からうま味のからうまみの煮汁が独立したものが多くみられます。

中国のだしで最も興味深いのは、だし材料による分類のほかに高価な材料の使用量の多寡によって等級をつける慨念です。

広頃料理では「頂湯」から「上湯」、「二湯」などの等級が、たしのランクを表します。

頂湯は文字通り最上級のだしで、老母鶏、豚赤身肉、中国ハム「火腿」を豊富に使ったモノです。

これらは、だし以外でも高級食材としてよく用いられます。

最下級の二湯は日本の二番だしに相当するものです。

中華料理店のメニューは世界中どこでも、前菜・主菜などのグループの中に、縦軸に材料、横軸に調理法が確立されていて、まるで麻雀の点数計算のような精緻で論理的なマトリクスの存在を感じさせます。

だしのランクの設定は、だしをとる調理が、料金設定をも加味した非常にシステム化された作業であることも示しています。

世界のどこでも価格と希望に応じた料理のだしを用意するマニュアルが整備されているとみることができるでしょう。

また中国では料理人の検定制度が早くから確立されており、調理技法が客観的に評価できるようにテキスト化されています。

テキスト化されただしの技術は再現性の高さから日本のだしと似ています。

見慣れた料理の安心感を与えながらも、深い味わいの個性が最後に上乗せされているように感じます。

関連参照:
和食の基礎知識




2017年5月18日木曜日

味噌汁は「幸せのスープ」

日本が世界でもトップクラスの長寿国になった最大の決め手が、私たちの食習慣にあるのは間違いないでしょう。

外国の研究者が指摘するように、和食には長寿の秘訣がたくさん隠されています。

和食文化が、ユネスコで食の世界文化遺産となったのも、そのような国際的関心の高まりが背景になっているのです。
 
主食は炭水化物を主成分とする米と決まっていて、主菜、副菜、副々菜が季節と連動しながら、次々と変化していくのです。

和食の食膳には季節感が溢れています。

料理を作っている当人が意識しなくても、季節の食材がのっているのが和食の食膳なのです。
 
そして、大豆の活用です。

大豆の三分の一以上はたんぱく質であり、これを上手に利用すれば、コレステロールや脂肪の多い肉をあまり食べなくても健康を維持することができるのです。

それどころか、大豆たんぱく質を中心にする主成分には、腸内で肉のコレステロールが吸収されるのを防ぐ働きさえあるのです。
 
すき焼きに豆腐を入れるのも味がしみて美味になるからだけでなく、結果的には、牛肉の脂肪系が体内に取り込まれるのを防ぐ作用をしていて、日本人の知恵と言っていいでしょう。

ヘルシーな主食のご飯にピッタリと寄り添っているのが「味噌汁」です。
 
大豆を麹菌で発酵させた、調味料の味噌で作った日本独特のスープです。

大豆に含まれる35%のたんぱく貿は、発酵によってほとんどアミノ酸に分解されており、味噌汁は体の健康を高める上で期待できるアミノ酸スープなのです。
 
味噌のアミノ酸の中でも、とくに注目されるのがグルタミン酸とトリプトファンです。

グルタミン酸はご存じのように、化学調味料の原料にもなっているほどのうま味成分です。
味噌汁のうまさのもとになってます。
 
同峙に脳の機能を高め、記憶と関係の深い働きをしているのもグルタミン酸なのです。
脳の老化防止に、味噌汁はそれなりに役に立っているのです。
 
重要なのはトリプトファンで、食べ物からとる必須アミノ酸である「幸せホルモン」と呼ばれる脳内物質のセロトニンの原料でもあります。

多幸感をもたらすのがセロトニンで感情を安定させ落ちこんだ心を励ますと同時に、心をおだやかにする神経伝達物質なのです。
 
ダシのよく利いた湯気の立つおいしい味噌汁をとると、何となく幸せな気分で心が満たされるのも、トリプトファン効果かもしれません。

ダシに使われるカツオ節には、和食食材の中でもトップクラスのトリプトファンが含まれています。
 
味噌汁は日本人にとって「幸せのスープ」なのである。
 
味噌汁作りの上手なお年寄りは、よく「具を3種以上使うと味噌汁がうまくなる」と言い胸を張ってニッコリします。

材科によっては、うま味をもたらすアミノ醵が増えるためで、味噌汁作りのコツを「実の三種は身の楽」とも言ったのです。
 
野菜、海藻、豆腐、油揚げ、魚の切り身、だし、時には豚肉など、昔は具たくさんの味噌汁が多かったのです。

幸せホルモンの原料だけでなく、他のアミノ酸やビタミン、ミネラル、食物繊維などもたくさんとれ、極めて健康効果の高い味噌汁になったのです。

関連参照:
和食の基礎知識



2017年5月8日月曜日

AIとの接し方

この3月18、19日、囲碁プログラムの世界選手権「UEC杯コンピュータ囲碁大会」が都内で開かれた模様が新聞などで報道された。

今後のAIとの接し方の参考になるのではないか、というので紹介する。

優勝したのは、中国のIT企業・テンセント社による「絶芸」。

ドワンゴ社などでプロジェクトを組む日本のディープゼンロ、「DeepZenGo」
(Zen)が準優勝した。

両AIは26日に都内で行われた「電聖戦」で日本の若手プロナンバー1・一力遼七段と互
先(ハンディキャップなしの対局)で対戦し、勝利を収めた。

また、同3月21~23日には大阪市で日中韓のトップ棋士とZenが参加したリーグ戦
「ワールド碁チャンピオンシップ」が行われ、Zenは1勝2敗だった。   

AIの碁の特徴は、戦いの骨格を作る序盤で顕著だ。
人間の・常識にとらわれない手法が次々と飛び出すのだ。

典型例が、相手に陣地を先に与えて損とされてきた「四線への肩付き」と言われる手だ。これまで悪手とされてきた手だという。


かつて本因坊などのタイトルを獲得した王九段は
「これまで『ダメだ』といわれていた着手A1が打って見直されるようになった]
という。

とはいえ、見えたのは長所だけではない、という。

「ワールド碁」でZenは、負けの局面で、悪手を連発する欠点を露呈した。
例えば、10手先まで読めるAIは、10手先に必敗の局面があると判断すると、その局面を
11手先、12手先に先送りするためだけの手を続ける傾向にある。

まるで、失敗を認めず、自暴自棄になっているようだ、という。
専門家は「とても賢いが、とてもわがままな子供」に例える。

この傾向はゲームに特有と言い切れるだろうか。
AIが医療や自動運転などで使われるようになった場合にも発生する可能性があるのではないか。

UEC杯の実行委員長を務めた伊藤毅志・電気通信大助教は
「囲碁AIの開発は、こういう弱点への対処法を探す想定実験にもなるし、
『子供のような』AIと人間がどう付き合うかのテストにもなる」という。

囲碁AIは今後、ますます強くなることは間違いない。

人間以上のAIが日常的に存在する世界で、プロ棋士は自分たちの価値をどう示すのか。

プロ制度の維持、人間とAIの共存は可能なのか、という問題もあるかも知れない。

パソコンの検索エンジン、スマートフォンの予測変換など、すでにAIの技術は「日常生
活に入り込んでいる」と専門家は指摘する。

今後、人間に代わって「労働」を行う時代も来るだろう。

そんな時、人間はどう振る舞うべきか。

囲碁AIと棋士との関係を来たるべき社会への実験ととらえた時、展望もみえてくる
のだろう。

関連参照
健康ライフのヒント集