むくみの原因となる病気には、全身性浮腫では心不全や腎不全、肝不全、内分泌疾患などがあり、局所性浮腫の場合には静脈性・アレルギー性のものがあります。
よく知られているように、妊婦の場介は、拡大した子宮による圧迫で下肢がむくみます。
血行障害やリンパ流の停滞によって組織全体の代謝が低下すると、その付近の集合リンパ管の壁にある平滑筋細胞の活性が落ち、内皮細胞の物質代謝に関わる細胞内小器官の減少や脱落などのような変性が起こります。
その結果、平滑筋による管壁の収縮力が小さくなり、リンパの還流機能が低下したり、リンパ管に炎症(リンパ管炎)が起きたりして管腔の閉塞・消失が進み、浮腫が悪化します。
さらに、浮腫の状態では組織液が正常に吸収されず、リンパ管によるリンパの循環が活発に起きないため、リンパの中の抗体や免疫担当細胞であるリンパ球の供給が滞り、免疫力が低下します。
過度の疲労や皮膚の傷などから、細菌感染やアレルギー反応などが起きやすくなり、赤い斑点や痛み、発熱を伴う「蜂窩織炎」(ほうかしきえん)という病気を併発したりします。
蜂窩織炎とは聞きなれない名前ですが、皮膚の小さな傷からブドウ球菌や連鎖球菌などの細菌が感染して起こる病気です。
表皮の下の真皮から皮下組織にかけて炎症が起き、膿んで熱く、かゆみや不快感が生じて赤い斑点が散在することから名づけられました。
この蜂窩織炎の病態に関して、日本のリンパ浮腫治療のパイオニアである廣田彰男医師(広田内科クリニック)はリンパ浮腫治療に関する小冊子(「リンパ浮腫の治療」、1993)の中で次のような考えを述べています。
「健康な浮腫のない皮下組織(組織間隙)は編みたてのセーターのようなもので、少し伸ばされても元に戻ります。いわゆるむくみが生じた組織間隙(網目の間)に液がたっぷり溜まりそれが長い問続くと、皮下組織内の弾性線維(毛糸)は伸びきって元仁尻れない状態になってしまい、所々ほころびてしまいます。
そのため元々は区分されていた皮下組織間隙は広がってお互いにつながってしまい、水分が自由に行き来できるようになってしまいます。
このような状態のところへ蜂高織炎のように熱が加わると、むくみを引き起こす液は急激に増え薄まるために流動性が増し、この時立っていると液は足の方へ落ちていきます。
その後炎症が治ってしまうとむくみの液は固まり(組織の線組化)、悪化することになります。
逆に炎症が起きた時、浮腫を患っている手や足を上に上げると、液が流動的になって高い位置にある手や足から低い位置の鼠径部へ向かい流れ、体幹部のリンパ管へ排出されることになります。」
少しわかりやすくいうと、
リンパ管の発育不良であったり、がんの手術などでリンパ節の切除をした場合、リンパの流れが悪くなり、運び去られるべき組織液が組織に溜まると、白血球などの活性が弱まって、細胞間隙にあるタンパク性物質や細菌などを処理する能力が低下してタンパク性浮腫が起こる、ということです。
リンパ浮腫では、組織内に水分や血漿タンパクを貯留させるだけでなく、時間が経つとしだいに皮下組織の広がりによる線維化か進み、皮膚を指で押してもへこまなくなります。
リンパ管の機能不全とリンパ液貯留によってリンパ浮腫が悪化し、皮下のリンパ管に痩礼ができ、そこからリンパが漏れ出たりして、患者のQOLを著しく低下させます。
関連参照:
「むくみ」を知る
0 件のコメント:
コメントを投稿