病気対策以外にもアディポネクチンの分泌を増やしたい理由があるのです。
アディポネクチンの「脂肪燃焼効果」です。
運動などの身体活動でエネルギーが必要になると、脳からの伝達によって脂肪分解酵素「リパーゼ」が活性化され、蓄えておいた脂肪をエネルギーとして消費します。
またその際には筋肉の中にある「AMPキナーゼ」という酵素も
活性化され、インスリンの働きとは関係なく糖や脂肪をエネルギーとして活用する働きがあります。
一般的にダイエットに運動が欠かせないのはそのためですが、実はアディポネクチンには、必ずしも運動を伴わなくても筋肉のAMPキナーゼを活性化する働きがあります。
運動なしでも糖を取り込み、脂肪燃焼を促すことができるのです。
さらに、アディポネクチンは増えすぎた脂肪がたまりやすい肝臓でもAMPキナーゼの働きを高めることが分かっています。
ですから、アディポネクチンが正常に分泌されていれば、過度な運動をしなくても脂肪を適切に燃焼しやすい体になれるというわけです。
また現在では、アディポネクチンの効果を利用した糖や脂肪の研究も進められています。
現時点で臨床応用にもっとも近い状態といえるのは、東京大学大学院の門脇孝教授、山内敏正准教授らの研究グループによるものです(2014年6月現在)。
門脇教授らは、アディポネクチン受容体を活性化する「アディポロン」(アディポネクチン受容体活性化低分子化合物)を発見しことを、科学誌「ネイチャー』電子版に2013年10月31日付で発表しました。
この発表では、肥満や2型糖尿病のマウスを用いた実験で高脂肪食を与えたマウスが120日後には約70%死亡したのに対し、「アディポロン」を1日1回投与したマウスの死亡率は約30%にとどまり、生存率自体も上がっていました。
肥満に伴うさまざまな病気の治療につながるものとして今後が期待されています。
関連参照:
アディポネクチンの増やし方
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